NO,159  田んぼ通信 平成19・12・12

 今年も師走となりました。  11月以来 暖かな小春日和の日々が続いたものの、さすがに冬到来です。 12月に入り2回ほど小雪が舞いました。
 この一年間、おコメを通してお世話になりました。こころから、感謝いたします。 
今年ほど 私達のおコメを食べていただいている皆様の存在をありがたく思ったことはありません。 本当にありがとうございました。
 いま、おコメを取り巻く環境が大きく変わろうとしています。 戦後農政の大転換だともいわれています。何が変わったか、変えようとしたか。これまでコメ生産に関する農業補助金は、全てのコメ農家を対象者としてきました。それを、今年から一定規模以上の農家に対してだけ交付するという仕組みに変えるというものです。 これに対し皆様もご存知のとおり、7月の参議院で政争の象徴とされ、自民党が惨敗したことで益々農政そのものが混迷してきました。
 これらの動きに対しいろんな考えがありますが、大切なことを忘れています。 そもそも今回の改革が何故でて来たかということです。 端的にいえば農業の担い手を確実に確保する為です。手法としての、規模拡大への誘導策だけを注目されますが、違います。人間の生存に関わる食料生産を担う農業者を確保する。そのために稲作構造改革を進めるのだと理解します。この構造改革論は、今始まった事ではありません。稲の生産調整・減反政策がはじまった昭和45年頃から大きな農政の課題でした。これまでも、数回にわたり大きな改革が試みられました。その度に、大きな自然災害の発生や政変等が重なり全てが中途半端な改革に終始しました。 ここで、問題なのは、農政の大改革と叫ぶ度に巨額の税金が投入され、無駄になってきたということです。 象徴的なことは、コメ市場開放に伴って実施されたウルグアイラウンド国内農業対策です。農業の国際化に向けた対策費として、6兆百億円という巨額の国家予算が5年間に亘り農業界に投入されました。 あれから10年経ったいま、農業の担い手が育ったか。 今もって30年前と同じ、担い手育成論がはびこっています。農業の担い手育成を叫び、巨額な農林予算をつぎ込めばつぎこむほど農業の担い手が益々いなくなるという不思議な現実があります。 農業という産業の特殊性からかもしれませんが、巨額な農林予算の無駄遣いの政治手法が、大きな社会問題になりませんし、マスコミも真剣に取り上げません。これが幸か不幸か。農業者として恥ずかしくなりますし、農業を大切に思っていただいている多くの皆さんにも申し訳なく思います。 この原因として、被害者意識を前提とした、農業者及び農業関係指導機関の意識と仕組みがあります。農業界は、弱者集団だ。 先のことは考えることはない、予算、金がある限り余計なことは言わずに、貰ってしまえばもうけもの。後は、またその時ナントかなるだろう。この体質が改まるどころか、いま与野党で議論されている農業改革の行方次第では、ますます酷くなる恐れがあります。全く無責任なことです。 皆さんの税金です。農林予算が、どのように使われてきたかを真面目に検証する時です。 こんなハズではなかった。 ある日突然、食料を供給してくれる農業者がいなくなった。 こんな無責任なことは許されません、命に関わる問題です。 
 コメの生産環境も 生産資材の高騰、それに引き換え、農産物の販売価格の低迷。 なかなか明るい兆しがみえません。しかし、 世の中のことを 嘆いてもしょうがありません。
来年の稲作に向けて、土作り作業や育苗に備えた準備も始まりました。 如何に、世の中 変わろうとも、おコメを作り続けます。皆様がいるかぎり・・・・・。
よいお年をお迎えください。


NO,158  田んぼ通信 平成19・11・15

 立冬が過ぎたというのに 暖かな小春日和が続く毎日です。
今秋に入ってから 霜が降ったのが一日だけ。それも、弱い霜です。
「今年の紅葉は、あんまりパッとしないね」とはお茶のみ話での会話。 里の紅葉は これから最盛期といったところです。それとも、あまり色付かないまま冬を迎えるのかな?そんな思いさえする昨今の暖かな天気です。
 コンバインがオーバーヒートするような猛暑の中の稲刈り作業。その後 先月22日から始まった大豆の収穫作業、それに続く来年の麦作にむけて大麦の種蒔き作業。 
 9月以来 お天道様のご機嫌を伺いながらの慌ただしい農作業も無事おわり ホットしている今日この頃です。  真っ青な空。その青に浮かぶ鮮やかな橙色の富山柿。 そんな風景も楽しむ余裕が出てきました。
 ところで、先月20日。 東京NHKのスタジオに行ってきました。先月の便りに書きましたが「日本のこれから」という番組に出演するためです。結果は、放送をごらんになっていただいた皆様の感じたとおりです。 
 その感じ方も人様々。 立場によって大きく違うことに 驚いています。
 これまで、数回テレビに出演した事がありますが、放送から一ヶ月余り経ったというのにテレビ観ていたよと 声を掛けられます。 こんな事は初めてです。 今回の放送は地元でも今までになく多くの皆様が 大いに関心を持って観ていたようです。
 ここは角田は、東北の米どころ。昨今の農政の大転換そして米の大暴落。 いくら農家総所得に占める米の収入が大幅に低くなったというものの 日常会話の共通語は「コメ」なんだと実感する日々です。 テレビの映像は所詮 人が造ったものです。しかし、そこに映し出される映像と言葉は、その人の本質が現れる。という話を放送関係者から聞いた事があります。 それだからこそ本音で自分の言葉で話をしたほうが良いというのです。  放送の中で、新潟産コシヒカリ・カリフォルニア産コシヒカリ・中国産コシヒカリを試食して日本産を当てるという三択の問題が出されました。 放送スタート直前 秋田から来た農家の親父さんから、ご飯の試食だけは辞退したいとの 話が出たものの本番へ。 
 私は、見事に日本産を当てました。 万が一、間違っていたら・・・・。 
 時間が経った今でも「当たってホントに良かった」と心から思っています。正直3番目の中国産は、別にして 新潟産とカリフォルニア産は 見た目では殆ど違いは分かりません、出演した米屋さんや稲作農家が間違ったのもうなずけます。ただ違うのは、食べた時の 甘味とコクの違いです。 一番 我が家のおコメに近いご飯を選びました。 
番組は、3時間の生放送。しかも、番組の内容に関する 打ち合わせは放送当日でも 殆どなし。 当日 夕方5時45分までNHK集合。控え室で6時から30分間ほど、簡単な夕食(おにぎりとサンドイッチ程度)を食べながら スタッフの紹介と番組に関する大まかな話。 夕方7時にスタジオ入り。 その場で はじめて三宅キャスターとご対面。「ここは、フジテレビのスタジオです。 丁度同じ時間帯に 中日対巨人戦があります。それに負けないよう頑張りましょう」という程度の話が三宅キャスターからあり そのまま放送本番へ。 打ち合わせの中で スタジオには、携帯電話はおろかペンやメモ、資料、パソコン等は 持込禁止。 スタジオでは、テレビカメラ10台が常に皆さんを映していますので発言の時以外にも そのつもりでよろしくお願いします。 な~~~んて話を聞かされての 生放送です。 3時間は 疲れました。


NO,157  田んぼ通信 平成19・10・15

 10月に入り 秋らしい晴天が続くようになりました。   田んぼは、稲刈り作業が終わり人影もなく静かです。今年の稲刈り作業は、9月はじめの台風などの影響で田んぼの状態が悪く、しかも 整備していたもののコンバインのトラブルが相次ぎ苦労しました。 夏以来、慌ただしい日々を過ごしてきましたが、ここ数日あたりの景色を眺める余裕が出てきました。 
例年 今の時期、収穫を終えたという安堵感が村全体に漂うのですが、今年は違います。
先の見えない不安からくる、なんとも言えない暗い雰囲気が漂っています。
 数日前、大手パン屋のヤマザキパンが 一割ほどの製品値上げを発表しました。
原料高と原油高騰による生産コストの上昇が原因とか。  それに反し、お米は、値上げどころか大暴落。 JAの仮渡金が一俵60k 1万200円。10数年前の半値です。
採算割れも良いところ。 パン業界だけでなく、稲作に関する生産コストも確実に上昇しています。 計算するまでもなく、大きく採算割れの状態です。
その影響が、日常会話の中にも聞かれるようになりました。
「田んぼをやめてから、生活が楽になった」とは、規模の小さい兼業農家の人達の話です。
稲作専業農家は、農機具や規模拡大に多額の投資をしているので、直ぐにも米づくりを放棄できません。 「田んぼをやめられる人は、幸せだ。多額の投資(借金)をしている担い手と言われる専業農家は やめるに辞められない」と冗談半分に言っていましたが、冗談ではなく現実のものとなってきました。 専業農家は、当面は借金が増えても米づくりを続けざるを得ませんが、中途半端な兼業農家は一斉に 稲作から撤退するでしょう。
 今年を境に、稲作の構造改革が一気に進むことは間違いありません。
問題、はこの先 誰が田んぼ(米づくり)を担うかです。
 ところで、食料自給率が40%を切る中、米を含めた農産物の輸入自由化をさらに進めるべきか。それとも国内農業を保護する為の自由化に歯止めをかけるべきなのか。という議論がおきつつあります。 NHKでも今週数回にわたりスペシャル番組を予定しています。
 私も、20日(土)総合テレビ夜7時半から10時半までの生放送「日本のこれから・どうする私たちの主食」という討論番組にお誘いがあり出演します。 その中で、「国内農業を保護してくれ」なんてちゃちな事をいうつもりはありません。 そもそも、農産物の自由化の問題は、命の根源である「食べ物」つまり自らの胃袋を 海外に委ねるのか、国産で満たすのか、という問題。単なる一産業の国内農業を保護するという次元で話すことではないと考えています。 もちろん私は、農産物は国内自給を前提に政策を考えたほうが良いと考えています。万が一、国民の合意として海外依存でも良い。という結論が出たとしても、政府に対し国民の一人として、絶対的に将来にわたり安定的に海外からの食料輸入を保証するという確約を表明する事を求めるつもりです。 また、そのような愚かな政策が現実のものとなったとしても、唯一 米づくり百姓として生き続けていくことは、昨今の低米価という状況下にあっても、私達が作ったお米を毎日楽しみに食し命をつないでいる多くの皆様に対し 百姓としての誇りと責任おいて 米づくりを続けていく義務があると考えます。
「このままでは、来年も米価が下がる雰囲気だ、生産現場を回って感じることは、こんな米価ではだれも米づくりを続けられない。こんな状況が続けば5年後には食糧危機だね」
とは、お世話になっている東京の米屋さんの話です。


NO,156  田んぼ通信 平成19・9・13

   新米収穫の ご報告をいたします。
今年も おかげ様で無事 収穫の秋を迎えることができました。
自然の神様、農作業を手伝っていただいた皆様、そして 日頃 おコメを食べていただいている、多くの皆様の支えがあってこそ実りの秋を迎えることができました。
 あらためて 感謝を申し上げます。
今年も、早春の田起し作業、春の種まき育苗作業、7月の低温、そして、先日の台風9号の直撃。 その時々で お天道様と会話しながら 多くの思いをいだきながら田んぼに通いました。 
 
毎年のことですが、新米の炊きあがりを待つのは、心が躍るひと時です。
炊きあがった新米を神棚にお供えし 子供と一緒に手を合わせ収穫の感謝をします。
炊き上がった ピカピカのご飯。 一年の田んぼへの思いの結晶です。
早速 家族でいただきました。
お米に 感謝です。
 稲刈は 始まったばかり。
11日に 稲刈りを始めましたが、先日の台風9号の雨、8月末からの雨模様の天気で  田んぼは軟弱。 最新のコンバインは 少々のぬかるんだ田んぼでも 稲刈りは可能です。 しかし、先日の台風で稲が 倒伏しはじめました。 ゴチャゴチャの田んぼ、しかも稲が 倒れはじめました。
 今年の稲刈りは例年以上に、体力はもちろんの事 一層の頭脳作業が求められそうです。
  「今年の 稲刈りは たいへんだ」 稲刈り初日の率直な感想です。
 「秋あげ半作」という言葉を より実感する秋になりそうです。
 全ては、お天気様次第。
一年の思いが詰まった 稲刈り作業です。 俵におコメを入れない限り安心できません。 心を引きしめ稲刈り作業を進めます 。。


NO,155  田んぼ通信 平成19・8・17

 残暑 お見舞い申しあげます。
今年の 暑さは正に猛暑。 最高気温が35度を超す日を猛暑日というそうですが、仙台でも15日に最高気温が37.5度を記録。角田でも36度の猛暑日を記録しました。
それでも、宮城の暑さは序の口のようです。昨日は、熊谷市と多治見市で観測史上最高を更新する40.9度という信じられない猛暑を記録しました。  関東・関西に住んでいる皆さんの事を思えば 暑いアツイと言っていられないようです。  
我が家にはクラーが一台もありません。 私の集落でもクラーのない家庭は、数軒となりました。サスガに今年は、子供たちが新聞折込のチラシを眺めては「父ちゃん毎日値段が下がっているぞ!」とクラー購入の催促。 
昨夜、雨が降った事もあり今日の最高気温は26度、久しぶりに30度を下回りそうです。これまでの暑さが嘘のようです。 昨日までは、パソコンの前にいても汗が噴出してきましたが、今日は快適です。都会では、クラーなしの生活は考えられないようですが、田舎では工夫次第でクラーなしの暮らしがまだまだ可能です。 農作業は、涼しい内の朝夕。 田んぼから吹いてくる風、屋敷内を通る風を感じて 昼寝をしながら暑さを過ごします。 
今年もクラーを買うのイラナイと、口論している間に 暑さは過ぎて行くようです。 
ところで、田んぼでは、稲穂が出揃い心配した低温の影響もなく 日増しに首を重く垂れてきました。 8月に入り連日の猛暑続きで忘れかけていましたが、7月中の天候は稲にとって厳しいものがありました。  7月中旬の稲の花粉が出来る大切な時期に、20度を下回る気温が続き、しかも日照時間も少なく冷害を懸念しました。
幸い低温被害は出ませんでしたが、このところの猛暑の連続といい 天候が変です。
 先日の新聞に、 「気象庁の生物季節観測速報によると、秋の七草の最初に挙げられるヤマハギの開花が異常に早い。全国各地で、平年の開花日より40日から65日も大幅に早い所が続出している。 ススキも仙台や北海道・函館でも平年より14日から18日早く開花した」という記事が載っていました。 
半月前までは、冷害が心配される程の低温、そして最近の猛暑の連続。また当地方には被害が出ませんでしたが最近発生した台風は、すべて超大型と称されるまでに発達します。 
日頃、目まぐるしく変化する社会情勢にだけ目を奪われがちですが、私たちの気付かない内に自然界の異変が確実に進んでいることは間違いないようです。
 3月末の苗作りから始まった今年のコメづくり。その時々のお天道様のご機嫌を伺いながら 8月までやってきました。 今のところ順調に育っています、豊作も期待できそうな作柄です。 これから、気掛かりなのは台風だけです。 一夜にして 実りが吹き飛ぶ事があります。 田んぼに稲がある限り 一時も安心できません。 
今年も「秋あげ半作」という言葉を思い浮かべる季節になりました。  自然の神様にお祈りする日々が続きます。。


NO,154  田んぼ通信 平成19・7・17

 心配した台風4号は、200ミリ程の大雨が降ったものの稲への被害は殆どありませんでした。 ただ、田んぼに作付けしている大豆は、水没した圃場もありどの程度の被害が出るか気掛かりです。 
 7月に発生した台風としては 超大型台風という事で心配しました。 風雨のピークが午後2時から4時頃 風雨共に強まり嵐です。 天気図を見ると台風の中心は、房総半島付近。角田からは300キロ位 離れているというのに台風の直撃を受けた感じでした。
 角田市は、隣の福島県を縦断している あぶくま川の下流に位置し、数万年にわたって上流から良質なミネラル分を多く含んだ粘土が堆積した 肥沃な耕土が広がっています。
しかし、低地が故に あぶくま川との水位差が殆どなく 昔から大雨が降る度に水害に見舞われてきました。 藩政以来 角田市の歴史は、水害との戦いだったといえます。  
 昭和初期に 当時としては東洋一といわれた排水機場が完成してからは、低湿地帯が開墾され見事な水田地帯に生まれ変わったものの常に水害と隣り合わせでした。
 今日では、10年前に完成した全国屈指の新しい国営江尻排水機場のおかげで、今回の200ミリ程の大雨でも水害の被害を受けずにすむようになりました。
  今年の稲は、田植え以来天候に恵まれ、梅雨入りしてからも晴天の日が多く続き順調に育っています。 稲の姿からも、久しぶりの豊作を期待できます。しかし、稲作は おコメを収穫する為。決して藁を育てるものではありません。 昔から「青田褒め」という言葉が示すように 前半の生育がいくら良くても 豊作になる保証はありません。 稲作の勝負所はこれからです。これから出穂期から実るまで一ヶ月間の天候で今年の稲作が決まります。 特に、花粉が育つ今後2週間の天気が重要です。 
 いま田んぼの稲は、稲穂が芽生え育ちはじめています。 幼穂期と呼ばれる時期を向かえました。 早生の稲では、幼穂が3センチ程に育ち 花粉のできる減数分裂期と呼ばれる大切な時期に入りました。 稲の生長の中で 一番低温に敏感に反応し弱い時期を迎えています。 低温の目安は、20度。 17度以下では、花粉が育ちません。
 ここ数日20度前後の気温が続いています。今日の最高気温予報が19度。コタツに火が欲しい気温です。 台風接近で 排水作業を心配していたのが 今度は田んぼに水を溜める心配をしなければなりません。  角田市は、地形の関係上 田んぼの水(用水)を確保するにも あぶくま川から揚水機場でポンプ揚水し、排水するにもポンプで排水しなければなりません。 稲を育てる為に、多くの費用を費やしながら田んぼを維持しています。 その管理を担っているのが農家で組織している角田土地改良区です。 田んぼの水は、個人の意思で自由に管理出来ません。 今回のように台風接近の場合は、防災上排水重視の管理から揚水機場は運転停止。しかし、稲の生育からすれば 低温に一番弱い減数分裂期を迎えています。しかも、低温襲来。 田んぼに少しでも多くの水を溜めて、稲を低温から守らなければなりません。揚水か排水か 土地改良区は難しい判断を迫られました。 毎年の事ですが、稲作りは机上論では理解しがたい事が起きます。 その時々で、最終の良いおコメを収穫するために総合的に判断し、即 行動する事が求められます。 しかも、予想できない自然相手。 昨日は、新潟中越地方で大きな地震が発生しました。  
 それでも、人間の力が及ばぬ事を心配してもどうにもなりません。 秋の豊作を信じ、常に最悪の場合を想定し、日々 今やれる事を確実に積み重ね 田んぼに通います。


NO,153  田んぼ通信 平成19・6・14

 今朝は 朝から夏を思わせる空が広がっています。
季節は、麦秋。  梅雨入り前に大麦の収穫を終えようと、天気図をにらんでの収穫作業の毎日です。 麦の収穫時期は、梅雨の時期と重なります。 麦の品質は、雨が大敵です。
 過去に、収穫を目前にして長雨にあい 品質が極端に低下し買い上げにならなかった苦い経験があります。  麦を出荷する時の水分は、13パーセント以下に乾燥して検査を受けます。畑で麦の種実の水分が30パーセント以下になった時を、見計らって収穫作業に入ります。 麦の実は、収穫適期に達し晴天が続くと急激に水分が下がります。
昨日の最高気温は30度。 昨日のような暑い日には、一日に10パーセントも乾燥することも珍しくありません。 原油高の昨今です。乾燥機に使用する灯油の値段も高騰しています。 燃料代を少しでも抑えるためにもギリギリまで乾燥してから収穫したいと考えるのは当然のことです。我が家では、毎年 8ヘクタールの大麦を栽培しています。 
乾燥機とコンバインの能力から 一日で収穫することは出来ません。 毎年 一週間程の刈り取り時期を予定しています。梅雨時、一週間の収穫期間に晴天が続く保証はありません。一日で収穫作業が終わるのであれば、天気図をにらみ畑でギリギリまで乾燥させてから 刈り取る事も可能です。 
毎年の事ですが、いつから収穫作業を始めるか判断に迷います。 農作業は、麦刈り一つとっても 総合的に判断して作業を進めることが求められます。
 迷った時の判断の基準は、常に何の為に仕事をするのかという目的を明確にする事だと 考えています。 「種を蒔いたからには、立派な作物を育て収穫する」 それが 百姓としての唯一の目的であり そのために農作業をするのだと考えます。
決してコストを抑えるために 農作業をするのではない。農産物価格が低迷している昨今、少しでもコストを抑えたいと思いがちです。いろんな考え方がありますが、作物を育てるという事は、必要なコストはしっかりとかけるべきだと考えます。
手間と資材を惜しまず精一杯考え働き作物を育て、それを食べてもらう皆様に喜んでいただく。 それで、百姓で生活できないのであれば その時はその時。 百姓はじめて30年、そんな思いを強くする今日この頃です。
今年は、例年よりも早く9日に収穫を始め、その後の天候にも恵まれ昨日13日で無事収穫を終えました。 コンバインは、エンジンの上に運転席があります。エンジンの熱気と折からの猛暑。しかも、麦ボコリ。 吹き出る汗を手でぬぐいながらの作業を続けました。 大麦の需要は、健康食品ブームで毎年5パーセントの伸びだといいます。しかし、生産者価格は低迷の一途。一向に栽培面積は増えません。 はくばく等の 麦の加工企業だけが儲かっているのかといいたくなる情勢ですが、麦作は我が家の重要な作物。秋になれば また麦を蒔く予定です。 刈り取り作業は終わったものの 出荷調整作業はこれから。 今度は、刈り取った畑に直ぐに大豆を蒔きます。 週間予報では、今夜から天気が 崩れ向こう一週間は 雨曇りマークが続いています。 大豆の種蒔き作業が終わるまで お天気様のご機嫌をうかがいながらの農作業は続きます。


NO,152  田んぼ通信 平成19・5・16

 風薫る5月。 山笑う季節。
今朝も 朝から快晴。 清々しい 気持ちのいい季節がやってきました。
今年も 無事 田植え作業が終わりました。 ホット一息ついている今日この頃です。5月に入り 毎日が田植え日和。
心配され晩霜の被害もなく、田植えされた苗は順調に育ってます。
 田んぼに稲を植えないかぎり、お米は出来ません。 お米作りで、最も緊張し大切な作業。それは、田植え作業です。 育苗ハウスで大切に育てられた苗は、自然界の広い田んぼに植えられます。 5月とはいえ 東北地方はまだまだ 寒い日がやってきます。 
時として 手がかじかむ様な肌寒い日も珍しくありません。 
寒さや風雨に耐え、新しい根と葉が伸び、元気に生長はじめるまで安心できません。
今年は、田植え作業が始まってから連日、暖かな日が続き植え痛みもなく、気持ちよく田植え作業を進めることが出来ました。 
田植えしてから 数日たち そっと苗を抜いてみると 真っ白な根が伸びてきます。 稲の生命力を確信する瞬間です。 今年も 朝日に輝く真っ白に伸びた真新しい根を確認する事が出来ました。 これで、今年も一安心。 田植え作業は、これで完了です。
ところで、田んぼで稲を育てる為には「水」(用水)が大切な役割を担っています。
 田植え作業を効率よく進めるためには、田んぼに水を入れ代掻き作業をしなければなりません。代掻き作業とは、田んぼに水を入れ土をドロドロ状態に柔らかくする作業です。田んぼを平らにすると共に、雑草の生育を抑え また、水持ちを良くする効果があり、田んぼを作るうえ欠かせない大切な作業です。この代掻き作業をするにも「水」が必要です。また、自然界の寒さや風雨から稲を守る唯一の手段も「水」です。 現在は、田んぼの雑草を押さえる為に除草剤を散布します。この除草剤を有効に作用させる為にも「水」が重要な役割を果します。
 特に、田植え直後から除草剤を散布し苗が根付くまでの期間が 最も水管理に神経を使う時期です。田植えして間もない苗はまだ小さく、稲の生長に合わせた水管理が必要となります。  田んぼの水は、自然になくなりますし、雨の日は水位が上昇します。
5月中は、一日に数回 田んぼに足を運びます。 寒い時は、水を多めに張り、暖かい日はできるだけ水位を下げて水温を上昇させ 生育を早めるようにします。 最近は、一枚の田んぼが大きくなり、しかも耕作面積も多くなりましたので、昔ほどこまめな「水」管理は出来なくなりました。 しかし、常に稲の気持ちになって田んぼに 通うことを心がけています。 今朝も田んぼを見回ってきました。
植えられた苗は、日増しに緑を濃くし 順調に育っています。 西につらなる残雪を湛えた蔵王の山々が、田んぼの大きな水鏡に映え、辺りの木々の緑も一段と緑を濃くしてきました。種蒔き準備以来 毎日が気ぜわしい日々を過ごしてきました。 ここにきて、ようやく辺りの景色を楽しむ余裕が出来ました。
風薫る季節。その空気を体いっぱい吸い込んで 田んぼ仕事をしています。


NO,151  田んぼ通信 平成19・4・16

 4月15日、朝5時30分集合。 集落の全戸参加による田んぼの 江払い作業の日です。
集落の共同作業は、年2回あります。春の江払い作業と夏の江刈り作業です。
江払い作業とは、田んぼに用水を引く為の水路を手入れする作業です。田んぼを維持する為には欠かせない大切な作業です。 最近では、江払い作業といっても、用水路の手入れだけでなく 集落内の道路の空き缶やゴミ拾い等の一斉清掃作業もします。 清掃作業は、主に高齢者家庭や非農家の人たちがあたります。
最近の用水路は、コンクリートで出来ていますのですスコップで楽に作業が出来るようになりました。 集落には約100ヘクタールの田んぼがありますが、3時間余りの作業で集落内の水路の手入れは終わります。 昔は、土水路でしたので雑草や土砂等が堆積して、たいへんな作業でした。作業時間も半日以上たっぷりかかったようです。
 稲を栽培するには、水が必要です。 水は高い所から低い所に流れます。この自然の原理を巧みいに利用し、広い田んぼの隅々に水を引く為に、用水路が張巡らされています。
用水は、あぶくま川から共同で揚水され用水路を通じて田んぼに流れます。用水路は、稲作にとって人間で云えば血管にあたります。 その血管を維持する為に 全国各地に土地改良区という組合が組織され、地域や集落全体で維持管理を続けてきました。 日本の田園風景の根幹は、そうした米生産に携わる全ての人々の営みで成り立っているのです。
 今、その稲作生産構造が大きく変わりだしました。
一昔前まで集落の殆どの家庭は、田んぼを所有し耕作している農家でした。今日では、所有はしているものの耕作そのものを担い手農家等に委託する農家が多くなってきました。特に、昨年あたりからその数は増えるばかりです。私の集落でも、田んぼを委託耕作に出す家が半分近くになりました。
田んぼは、誘致企業等に勤めながら維持管理されてきました。兼業稲作といわれるものです。戦後、高度経済成長以来兼業農家が、日本のコメつくりを支えてきたといえます。
 それが、いま大きく変わろうとしています。 兼業稲作を現場で支えてきた、親父さん達が高齢化によって続々リタイアしてきたこと。 また、ここ数年の米価の下落によって生産費割れが明らかになったことで生産意欲が極端に落ちてきたこと。などで米づくりを諦める農家が続出しています。 「田んぼなんて儲からない、要らない」そんな声が聞こえてきます。田んぼの存在そのものが、厄介者扱いの雰囲気が出て来ました。 考えられないことです。
 そのような時代背景の中での、今年の江払い作業。 委託した農家の皆さんもスコップを片手に 文句一つ言わずに用水路の手入れをしてくれました。 ありがたいことです。
 恒例の江払い作業が、いつまでも続く集落であって欲しい。そんな願いを込めての江払い作業でした。 桜は、今が満開です。 育苗ハウスでは、苗が順調に育ってます。 今月末には、田んぼに水が入り、5月はじめには田植えが始まります。
 今年も、皆さんに喜んでもらえるお米を育てる為、真面目に田んぼに通います。


NO,150  田んぼ通信 平成19・3・13

 今朝は 冷たい北風が吹き 道路がカチンカチンに凍っています。昨日から降りだした雪は、10センチ以上積もりました。 田んぼ一面真っ白。この冬(もう暦は3月、早春ですが)初めての本格的な銀世界。真冬並みの風景が広がっています。 
この冬は、これまで経験した事もない暖冬です。 3月初めには 陽だまりに自生している黄色のラッパスイセンが咲き出し、芝桜も咲き始めました。 これには、びっくり。
それが、一気に真冬に逆戻りです。これまでも、3月に入ってからの雪は、それほどめずらしくありません。しかし、今冬は極端な暖冬です。今朝の寒さは、いっそう厳しく感じます。  本当に天気のことは、全く分かりません。 最近、その天気がますます分からなくなりました。 それでも、季節は確実に動いています。 3月になり昼間の時間が長くなり 農作業も一気に忙しくなりました。 種もみ準備など本格的な農作業も始まりました。  常にお天気様と直接向き合っての仕事。それが農業です。特に、広い田んぼが相手の米づくり等は、天気に関する情報をどのように読むかが大切になります。それによって あらゆる災害を想定し田植え前にその対策を施さなければなりません。 気象災害に対する備えは、天気が悪くなってからでは遅いのです。 「備えあれば憂いなし」といわれるように 事前にその準備をしておかないと役に立ちません。気象災害に対する対策は、田植え前にその殆どが決まるのだと考えています。誰しもがこの夏の天気を心配する昨今ですが、その備えはまだまだ不十分です。
ところで、この冬の極端な暖冬で山には雪が少なく、夏の水不足等が今から心配されています。しかし、一般の人には余り知られていませんが農作物に大きな被害をもたらす怖い自然災害、それは 晩霜害です。ここ20年来、晩霜による大きな災害はありません。
農家の間でもその怖さを忘れかけています。しかし極端な暖冬の今年は、特に心配です。 例年以上に 農作物の生育が早まっているからです。多くの農作物は、年に一回しか収穫できません。その大切な新しい芽が晩霜に遭うと大きな被害を受けます。 台風など多くの自然災害は、大風や轟音等の大きな脅威を伴ってやってきますが、晩霜害は違います。 風もなく静かで穏やかな晩にやってきます。 時としてその被害は、台風以上の大きな被害をもたらす事もあります。 たった一晩で 一年の収入の大半を失うことになるのです。
 農業仲間で、昔からの民間気象に関して勉強している人がいます。 彼によると 満月の夜は、その前後に大荒れの天気があったとしても、不思議と天気が穏やかになるというのです。 暦をみると5月2日が満月です。 暖冬によって生育が早まっている草木は、盛んに芽吹いていることが予想されます。 果樹園を経営している農家からは、いまから心配する声が出ています。 「コメ作りは毎年一年生」 
今年も、天気を気にしながらの農作業は始まりました。
 話は、変わりますが、私の友人である 前宮城県知事の浅野史郎さんが、なんと東京都知事選挙に立候補しました。一昨日仙台で会合があり、その席上 浅野さんは「日本人だから」という今回の立候補の大儀をのべました。 あらゆる分野で日本の選択が試される 時代なのでしょう。 再び巨像に立ち向かいます。応援してください!!!


NO,149  田んぼ通信 平成19・2・15

 このまま、春になるのでしょうか。
昨年 秋以来続いていた、異常な暖冬傾向。 この冬は、まだ一度も雪景色がありません。
冬特有の西高東低の天気図、今年は殆ど長続きしません。 大陸からの冷たいシベリア高気圧がやってこないのです。 冷たい乾いた北風も吹かず、田んぼは乾かず年内中の田起こし作業が出来ませんでした。 こんなことは、初めてです。しかも、新年になってからも集中豪雨。つい最近まで、田んぼには水溜りが出来ている始末です。
例年ですと2月になったとはいえ、田んぼは凍みていてトラクター仕事は出来ません。それが、今年は違います。 まったく田んぼが凍みていないのです。こんな事も初めてです。 新年早々 ポカポカ春のような天気が続いています。 
 これ程までの暖冬ですと 日常の会話の中にも 夏の天気を心配する声が出てきます。 当然、冷夏を心配する声です。稲作りは、お天気様のご機嫌で殆ど決まります。今から夏の天気が分かれば稲作りは苦労しません。 いろんな手立てを講じることもできます。
しかし近代科学が発達した現在でも、長期予報は殆ど当てになりません。
それでは、夏の天気をどのように予想しているか。結論から言えば「神様」に聞いて毎年稲の栽培計画を立てています。 スーパーコンピューターが発達したいま時、なに言ってるんだといわれそうです。 残念ながら近代科学を駆使したはずの気象庁発表の長期予報は、ほんの少しの参考程度の情報に過ぎません。 それが証拠に、この冬がこれほどまでの暖冬になるとは 誰もが予想していませんでした。 
さて、今年も数日前に、角田市内にある諏訪神社で毎年1月15日未明に行われる 筒粥神事の結果を記した筒粥目録が配られました。 この神事 今年で671年の歴史を持つもので、今もってその様子は一切公開されていません。 先日、諏訪神社の宮司さんにその様子を聞く機会がありました。  それによれば、12本の葦の筒と一緒に粥を炊き、その筒に入った粥の状態をみて、 その年の雨・風・お日様などの天気。また、稲の早生・中手・晩生など品種ごとの作柄、麦・豆・小豆など6種類の雑穀の作柄予報が書き記されています。 今年の筒粥目録。 早生が7分で普通作、中手が8分で豊作、晩生が6分で不作。 お日様が6分で日照不足。雨が7分で普通。風が8分で多い。麦が8分で豊作。豆が6分で不作。 とありました。この結果をどう読むかは、自己責任の世界です。 総合的に読み判断します。  
誰しもが冷夏の不順な天候を予想します。 しかし、一口に稲の冷害といってもそのパターンは大きく3種類あります。その中でも一番怖いのが、稲の穂が出る2週間前から5日前ごろの、約2週間の間に極端な低温に遭遇する事です。その頃が、稲の受粉に欠かせない花粉が出来る大切な時期です。 いつ低温がやってくるか。それを予想して 早い品種と遅い品種を組み合わせて危険分散を図るのです。 その品種構成割合を如何にするかは、直接経営に大きく影響する大切な決定事項です。 予想される夏の天候不順。 作付け品種の構成を如何にするか。 低温対策として深水管理が出来るしっかりした畦を作る。など冷害対策は、今の時期から田んぼに水が入るまでの 4月半までに9割方決まるといっても云いのです。 今年の筒粥目録からすれば、稲の生育を早め 早生の品種の割合を多めにしたほうが 良さそうです。 
「稲つくりは、毎年一年生」この言葉を噛み締める今日この頃です。。


NO,148  田んぼ通信 平成19・1・16

 今年の年賀状デス。
新年おめでとうございます。
昨年中は、たいへんお世話になりました。
 暖かな新年を迎えました。あまりの暖かさで夏の天候が心配になります。
如何なる天気が来ようとも、今年も喜んで食べていただけるおコメを作ります。
今年も、宜しくお願いします。
業界紙の日本農業新聞・元旦一面に、尊敬する経済評論家の内橋克人さんが載っていました。
内橋先生には、数年前からお米を通してお世話になっています。「共生セクターの時代」という見出しで日本の進むべき道を諭しています。
その中で「農は高度・総合的な「未来産業」であり、原材料や素材を提供するだけの「一次産業」ではない。農は「育てる」「養う」「守る」という「生存条件」の全てを満たす。また、農家も農協も共生社会の担い手として、新たな「農的価値」への覚醒(かくせい)をなし遂げてもらいたい」と農業界への期待を込めて書いておられます。
覚醒とは、「迷いからさめて、本来の姿に戻ること」と辞典にあります。
   今年、3人の仲間で会社を創ります。
私の他は、40代前半の有能な仲間です。 
会社名「LLPあぶくま農学校百姓先生コンパニー」
角田を中心とした農村文化及び農産物を商品として企画し発信することを目的とします。
極めて小さい、吹けば飛ぶような会社での旅立ちです。 
3人とも農への熱き思いと、新しい農の創造への心意気だけは負けません。
目指すところは、アジアです。
皆様の更なるご指導をよろしくお願い申し上げます
平成19年  元旦
さて、今年も正月も過ぎ 小正月の時期になりました。
私の地方には、昔ながらの小正月を迎える行事があります。
 団子さい、鳥追い、かせどり、等です。
団子さしは、今でも生活に根ざした行事として残っています。
しかし、鳥追いは、ドント焼き始まってから殆どの家でやらなくなりました。
ヤーホイホイ ホイ~~と大きな声を出し しめ縄やオトスナ等の正月様を屋敷内のアキの方角に送ります。正月早々 世の中 天気も人間も狂いっぱなし。
ヤーホイホイ ホイ~~を復活しないと どうにもならないのでは・・・・。
との思いを新にする小正月です。