□ 浅野史郎・宮城県知事のメールマガジン

H15年は 記録的な冷害でした。
私は、新しい時代の政治システムを創ろうと、日々頑張っている 浅野史郎・宮城県知事が大好きです。
宮城県民の一人として、この宮城から 日本の新しい時代を 発信しているのだと思っただけでも、誇りに感じて毎日 百姓をしています。
その浅野知事さんメルマガに 私の事をとりあげていただきました。
光栄に思っています。
お許しを得ましたので、ご紹介いたします。



浅野史郎メールマガジン ━━━━━━━━━━━━━━━━━━2003/10/7
http://www.asanoshiro.org/                  第109号
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> [週刊コラム・走りながら考えた] <

 ○「今年のお米」(浅野史郎)

 今年のお米は、夏場の低温・長雨による不稔、日照不足による登熟不全、 そして、秋口の多湿・高温による穂いもち病の発生により、記録的な不作と なっている。全国的に不作であるが、その中でも、東北地方の太平洋岸と北 海道の出来が悪い。わが宮城県は、9月15日調査の作況指数が78という ことで、青森県、岩手県に次いで全国第3番目の悪さである。

 思えば、私が宮城県知事に就任した年、1993年(平成5年)は、大冷 害であった。作況指数が宮城県で37。それから10年。今また大変なお米 の不作を迎えている。10年前に比べれば、今年はまだいいほうだという声 がある一方で、今年のほうがもっと悪いという反論もある。どちらも本当で、 地域によって出来高が大きく違っている。実は、農家ごとに違う。もっと言 えば、田んぼごとに差異があるという状況である。

 「角田の百姓」を名乗る面川義明さん、50歳は、米づくりに携わってほ ぼ30年。コメ作りのプロと自称し、今回の冷害においても、過去の経験を 生かして、被害を最小限に抑えている。毎年おいしいお米を我が家に送って 下さっているのだが、今年もちゃんと届けてくれた。そのお米に同封された 手紙の中の「今年の新米は、今年の天気が丸ごと入っています」という表現 が印象的である。

 確かに、お米にはその年の天候の状況が丸ごと入っている。今年のように、 お米にとっては散々な天候であったことを考えれば、今年の新米には、例年 のような「太陽がいっぱい」のうまさがなくても当然であるが、それにして はうまい。いや、相当にうまい。さすがに、コメ作りのプロである。悪いと きには悪いなりに、ある程度の水準を確保する技術は、プロの腕と言うしか ない。

 田植えの時期を、ゴールデン・ウイークを避けて、5月の下旬にもってく ることによって、減数分裂期、つまり花粉が形成される時期の低温被害を免 れる。宮城県では30%ぐらいの確率で、7月下旬に低温被害に見舞われる が、ゴールデン・ウイークの田植えだと、丁度この時期が減数分裂期にあ たってしまう。稲の受精に係わる時期であるから、人間で言えば、赤ちゃん の誕生にかかわる最も大事な時期である。

 田んぼの水を10センチ以上の深さに保つことによって、低温被害を避け ることができる。深水管理という技術だが、これがうまくいったかどうかで、 面川さんが手がけた田んぼの中でも、出来不出来の差がはっきり出たとのこ と。そして、いもち病防除の対策。これは、県内の同じ地域であっても、穂 いもち病の発生状況が田んぼごとにだいぶ違う。面川さんの場合は、穂いも ち病被害はしっかりと食い止めた。

 豊作の時は、コメ作りの技術について、あまりどうこうしなくとも、それ なりの収量と品質は確保できるのだろう。しかし、今年のような気候条件に なると、面川さんの言う「基本技術」ができているかどうかが、結果を大き く左右することになる。田植えの時期、深水管理、穂いもち病対策、そして 土作り。

 こういった基本技術は、地域の中で先輩から後輩へと伝えられているので あろうが、やはり、行政やJAなどの機関がしっかりと指導することも必要 である。こういった気象条件の年であるだけに、そのことが気になるところ ではある。

 気象条件だけみると、10年前の平成5年の冷害の時と比べて、今年のほ うが悪いという見方もある。地域によってはそのとおりだろう。しかし、お 米の収量・品質は、平成5年ほど悪くならずに止まっている地域もある。も ちろん、農家ごと、田んぼごとにも違っているようであるが、それにしても、 冷害克服の努力は確実に実を結んでいる。前回の冷害の教訓が生かされてい る部分であろう。

 残念ながら、宮城県を含む東北地方の太平洋沿岸は、何年かに一回の冷害 は免れないというのが、過去の経緯である。であるとすれば、農政としても、そのこ とを読みこんだ上での対策がとられなければならないし、農業経営そ のものも、天候頼みでいいはずはない。

 消費者の立場としては、その年の天候にかかわらず、いい味のおコメが欲 しいだけ手に入ることを当然のように期待している。農業も、「モノづくり」 としての産業であるのだから、消費者のそういった期待に応えることを基本 として考えなければならない時代状況と言える。

 再び面川さんの言葉を引用すれば、宮城県の1軒1軒の農家は、みやぎ米 というブランドの生産を請け負っているメーカーである。消費者を満足させ るような製品(みやぎ米)を、どういった条件の下においても届けなければ ならないというのが、メーカーとそれを総合する農政全体の義務である。面 川さんの「コメ作りのプロ」宣言とともに、そういったことを、改めて認識 させられる今年のお米である。

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発行:浅野史郎・夢ネットワーク メールマガジン