□ 月刊NOSAI 2008年2月号 巻頭 寄稿 2008年2月

「趣味は百姓、職業は農業」
我が家は、専業農家である。私の夢は、日本経済界のトップの経営者たちと対等に話せる農業経営者になることだ。「俺は地球上に、自らの汗を注ぎ込んだ「命」を育む土地がこれだけある。 あんたは、この地球上に何を残したのか」そんな話をしたいと考えている。   
 就農当時、自作地3.8ヘクタールの田んぼで稲作りしていた。現在 借地を含め25ヘクタールの田んぼで米と大麦・大豆の農業を営んでいる。 そのうち約11ヘクタールが自作地だ。 この30数年間で、約7ヘクタールの田んぼを購入して規模拡大をしてきたことになる。 その殆どは、私が経営主になった20年前から購入した田んぼである。 購入資金は、全て長期の国の制度資金である。つまり、国から借金して規模拡大をしてきたわけだ。  毎年、暮れになると資金繰りで通帳をにらんでの日々が続く。さすがに去年の暮れは、米価下落と農政の激変を反映してか、激動の中を生きているという実感を痛切に感じて大晦日を迎えた。
 田んぼは、稲作農家にとって最大の仕事場である。 20年前に10アール当たり二百万円した田んぼが今、五十万円前後なった。しかも、場所によっては、誰も買い手がいないという。田んぼ価格の暴落だ。10年前には、考えられないことだ。経営面積を拡大しようと思えば、借地でいくらでも増やせる時代になった。当然、借金までして田んぼを買って規模拡大する必要はない、馬鹿げている。これまでも、止めろといわれた。そんな事をしていたら、お前が潰れるぞとまでいわれた。それでも、話があれば田んぼを買い続けている。
これからも国からの資金が続くかぎり、そうするつもりだ。昨今の状況からすれば、 日本国と心中する心境である。 
 何故か、百姓だから。日本国民の小作人になる覚悟はあるが、兼業農家の小作人になるつもりはない。あきれ果てるほどの混迷極まる農政。ますます先が、見えない状況になった。しかし今、以前よりも迷いはない。いまの私に、百姓を辞めるという選択肢はない。 百姓として生き続けることは、私が作ったおコメを毎日たのしみに食し「命」を繋いでいる多くの皆様に対し、百姓としての「責任」と「誇り」において自らに課せられた義務なのだ。
プロフィール
おもかわ よしあき=54歳。   
稲作農家。 水稲17ヘクタール、大豆・大麦二毛作8ヘクタール。
ホームページ    http://www.omokawa.com