種モミの塩水選作業をはじめる。
最高気温3.6度。 寒い日だ。
一年前の今日。
同じく種籾の塩水選作業をしていた。
午後2時46分。
これまでに感じたことのない大きな揺れ。
東日本大震災が起きた日だ。
あれから一年。
角田市は、内陸部のため大津波の被害こそなかったが、建物の倒壊や下水道施設などに
大きな被害があったものの、 太平洋沿岸部に比べればその被害程度は少なかったといえる。
しかし、いま 東京電力福島原発事故による 放射能害とその風評害が地域の暮らしに重くのしかかってきている。
その解決策が 全く見えないことから将来への不安だけが増す日々だ。
それでも、今年も春が来た。
いつものように 種籾の準備作業をはじめた。
人が生きている限り 食べ物が必要だ。
いつものように 淡々と農作業を進めるだけ。
それが、百姓に与えられた仕事だ。
何処にも逃げ出さず、生まれ育ったこの角田で生きていく。
今年の4月から 国の放射能食品安全基準値が 500ベクレルから五分の一の100ベクレルに
たいへん厳しくなった。
農業の生産現場も その対応に大きく振り回されている。
しいたけ栽培農家の仲間は、廃業に追い込まれた。
安全基準値が100ベクレルという 厳しい基準値になっても風評害は収まらない。
放射能の被害は、分からない。 分からないから怖い。
怖いから、排除する。 馬鹿げた構図だ。
そもそも、人の明日の暮らしこそ どうなるか分からない。
その不安の中で生きている。
それでも、明日を信じて前を向いて生きている。
今年も、明日 食べるためのコメ作りははじまった。